変態学生カップルのスワッピングもの。4人のうち一翔と凉風の関係性がメイン。一部のルートは普通に寝取られるより精神的にきついかもしれない。見切り発車で発売された感はあるものの、それでもなお優れた作品だ。
ストーリーの特色
肉体関係からはじまる恋人関係
本作は、一翔(主人公)と凉風(メインヒロイン)の変態学生カップルが、スワッピングを通じて、恋人としての絆を深めていく作品だ。
本題のスワッピングが開始されるより先に、まずは一翔と凉風が付き合うまでの経緯ーー凉風の教室オナニーを目撃し、それから肉体関係を重ねることにーーが丁寧に描かれる。スワッピングものは最初から親密な関係ではじまる作品も多いが、しかし親密になるまでの過程を知ってこそ、後のスワッピングプレイでの嫉妬や後悔といった負の感情も深まるというものだ。
一翔視点と凉風視点
ストーリーは、一翔視点と凉風視点の2つに分かれている。最初は一翔視点で進めることになるが、ストーリー進行度に合わせて凉風視点のイベントも開放されていく。
凉風視点は、Flow Chartからいつでも自由にみることができる。ここでは、一翔視点と同じイベントを凉風の主観を通じてみることになる。一翔視点でみた凉風は、率直に言って”理解しがたい意地悪な変態女”だが、凉風視点でみるとその印象は少し違ったものになるだろう(→ネタバレされても良ければ、ヒロインについての個別レビューを参照)。
スワッピングで、ふたりの隠れ性癖が開花する
凉風は、一翔には隠れた変態性癖(性的嗜好)があることを見抜いている。それは、寝取られ(せ)マゾという、どうしようもないもの。凉風は、一翔の寝取られマゾ性癖を開花させるために、彼の友人カップル(凛太郎と乃愛)とスワッピングすることにしたのだ。
しかし、一翔は潜在的には変態であっても、理性がそれを上回る”常識的なヘタレ”でもある。それゆえ、一翔は、凉風や凛太郎によってより過激なスワッピングプレイに誘導されそうになるたび、気持ちにブレーキがかかりそうになる。
一翔のマゾ性癖を確信する凉風は、表面上は恋人の意見を尊重する姿勢をみせる。だが、結局はより過激なプレイにのめり込むよう、彼のかわりにアクセスを踏んでいく。スワッピングの快楽を知ってしまった変態は、もう普通のセックスには戻れないーーそんな素振りをみせる凉風もまた、スワッピングを通じて、変態としての業をさらに深めていくことになるのだ。
一翔の嫉妬心
一翔は、スワッピングしている間、凛太郎に抱かれる凉風をみて嫉妬と不安に苛まれることになる。
凛太郎は一翔よりもセックス経験が豊富なので、初心者の一翔よりも女をイカせるテクニックは上手である。また、凛太郎のペニスは一翔よりも長く、凉風の膣の奥まで突くことができるのだ。
一翔は、凉風は自分よりも凛太郎としているほうが気持ちいいのではないか、と不安でいっぱいだ。凛太郎の長ちんぽに膣奥まで突かれてあんあん喘ぐ凉風をみて、嫉妬に胸を焦がしながら、乃愛に差し出した自らのちんぽを雄々しく勃起させるーーそんな寝取られマゾが、彼の本性なのだ。
もっとも、凉風に言わせれば、一翔には一翔の良さがあるという。一翔のペニスは、長さこそ凛太郎には及ばないものの、太さについては一翔のほうが勝っている。また、一翔は凛太郎よりも体力的に勝っており、何度も激しくセックスできる。
しかし、他人に自分の女を抱かれて抱く感情は、理屈では抑えられないもの。凉風は、嫉妬の視線を向ける一翔をみて、今日もまた彼よりも濃い味のする凛太郎の精液を味わうのだ。
凉風の”はじめて”を奪うのは誰か?
注意! この項目は、この作品において重大度の高いネタバレを含みます。未プレイの方は、予め知らないほうが楽しめるかもしれませんので、ご注意ください。
本作のストーリーは、凉風の処女を誰が奪うかによって大きく分岐する。
一翔が無事凉風の処女を貰い受けるなら、後は比較的マイルドなスワッピングプレイを楽しめる。だが、一翔が凉風の求めに応じなかった場合、凉風は凛太郎に処女を捧げることになる。
一翔は、凉風が見抜いた通りの寝取られマゾ野郎である。 そんな一翔が肉体関係に躊躇し続けるなら、凉風は容赦なく彼の精神をグチャグチャに追い込んでいく。そうすることによって、彼女自身の隠れ性癖もまた満たされることになるからだ。
一翔は、友人である凛太郎に、彼女のいろんな”はじめて”を奪われていく。肉体的なものだけに限って列挙すると、処女、ファーストキス、パイズリ、アナル生挿入(腸内中出し)、生ハメセックス、初中出しなどーー要するに、ほぼ全部である。終いには心だけ残して、からだは全部持っていかれることさえある。
もちろん、”はじめて”を奪われることは、ルート次第ではある程度回避できる。ただ、真正の寝取られマゾにとって、果たしてどちらが本当の幸福に繋がるのかといえば、それは言わずもがなであろう。
エロシーンについての概観
基本CG枚数とエロシーン数
エロシーン数 合計50:凉風(別室スワッピング分を含む) 14、乃愛(〃) 4、凉風&乃愛(同室スワッピングのみ) 32
基本CG 63枚+演出用CG 11枚。基本CGの枚数だけみると、若干少なく感じる。だが、演出用CGのほうも基本CGに近いクオリティで描かれており、若干の差分もある。トータルでみると、価格相応といったところだろう。
多様なスワッピングプレイ
エロシーンは、大多数がスワッピングだ。それに特化した作品というだけあって、多様なスワッピングプレイが行われることになる。具体的には、以下のとおり。
スワッピングは、一人暮らしの凛太郎の部屋で行われることが多いが、学園内など別の場所で行うこともある。ヒロインは全裸か、もしくは制服、私服、水着(数種類あり)などを着て行為に及ぶ。
一枚絵は凉風と乃愛に寄った構図が基本だが、プレイ中の全員が映るように引いた構図もある。引いた構図では、交換したパートナーと次々と体位を変えてまぐわうので、少し遠くから乱交、または(実際には合意があるとしても)浮気現場を覗き見ているような気分を味わえる。
数々のスワッピングプレイのなかでも、個人的には別室スワッピングとアナル開発がお気に入り。
別室スワッピングでは、一翔が乃愛とまるで恋人のように甘く激しく交わった後には、一枚絵つきのちょっとしたピロートークまで用意されている。それで気分を良くしたら、次に凉風との事後報告会で、凛太郎に抱かれた彼女の痴態を知るまでの流れが最高だ。さらに、凉風視点での別室スワッピングでは、その様子が具体的なエロシーンとして描かれている。
アナル開発については、いきなり挿入したりせず、一翔と凛太郎がちゃんと勉強してから開発するところが良い。それは互いのパートナーを大事に思っている証拠である。はじめてのアナルセックスでも、凉風と乃愛は事前に排便を済ませて腸内を綺麗にした後で、行為に及ぶことになる。
避妊はしっかりと
変態4人は、スワッピングの快楽と興奮に夢中だけれども、別に恋人を身も心も寝取らせたいわけではないし、学生の身分で孕むつもりもない。それゆえ、抜きゲーにしては珍しく、本作ではほぼ全てのエロシーンで避妊が行われている。
序盤~中盤にかけては、コンドームの着用が基本である。コンドームは、男が自分でつけることもあるが、ヒロインがお口を使って被せてくれる場合も多い。そのコンドーム着用シーンは、一枚絵の差分やカットインで丁寧に描かれるので、コンドームフェチにはたまらない演出だ。
終盤では、生ハメセックスを行うまでに発展するものの、ヒロインはちゃんとピルを服用している。もちろん、ピルのみでの避妊は完全ではないので、万全を期すならコンドームも着用すべきだが、万が一のときの覚悟は完了しているようだ。彼女たちは変態だが、こういうところだけは、年齢のわりに分別がついている。
凉風視点でもう一度
本作のエロシーンのうち、約3割は凉風視点で描かれる。
残念ながら、別室スワッピング以外は一翔視点の基本CGを使いまわしているが、凉風視点でみると多少は新鮮な気持ちで楽しむことができる。また、一翔視点では分からなかった事実を知ることもある。
これを一翔視点コンプリート後に食後のデザートのような気持ちでみるか、それとも視点を交互に行き来しながらみるかは、プレイヤーに委ねられている。
ヒロインについての個別レビュー
綾瀬 涼風 (CV:花澤さくら)
注意! この項目は、この作品において重大度の高いネタバレを含みます。未プレイの方は、予め知らないほうが楽しめるかもしれませんので、ご注意ください。
一翔のカノジョ。もともと教室の机の角でオナニーする変態だったが、一翔にバレてからは口止めフェラで本物のおちんぽを堪能する変態になった。そして一翔と晴れて恋人どうしになった後、彼には寝取られマゾという隠れ性癖があることに気づくのだった。
凉風という変態女のヤバいところは、彼女自身の主観においては、恋人への献身と自身の欲望追求とが矛盾なく両立している、というところだ。
凉風は、一翔を心から愛しており、自分と彼のためになることなら何でも躊躇なく行える女だ。しかし、何が自分たちのためになるかという判断をする段階で、彼と腹を割って話し合うことはない。凉風がそれが自分たちのためになると判断したなら、あとは彼のいないところでしっかり根回しをして、自分が思うような方向に彼を誘導するのだ。
凉風にとって、スワッピングで一翔の心を弄ぶことは、あくまで自分と彼のためにすることだ。実際、一翔も何だかんだで状況を楽しんでいるのだから、拒絶されないかぎり自分のやっていることが間違っているとは思わない。それに、もし一翔が本気でそれを拒むのなら、凉風は反省するし、彼のためにスワッピングを止めることだって出来るだろう。
しかしながら、スワッピングは、凉風にとって自分の変態性欲を満たすために必要な行為でもある。一翔がスワッピングによって自身の寝取られ性癖を満足させているように、凉風自身もまた、そんな彼を愛おしく思い、嗜虐的で背徳的な快楽に身を震わせているのだ。
自分の性的欲求を満たすために必要なことが、恋人のためにもなるのであれば、それを躊躇ういかなる理由があるというのか? 凉風はある意味プラトニックな少女で、目的意識がしっかりしているからこそ、恋人をどこまでも倒錯した世界に追いやることができるのである。
佐倉 乃愛 (CV:雲雀ゆい)
凛太郎のカノジョ。一翔と凉風が付き合う前から、凛太郎とはすでに恋人どうしであり、肉体関係も持っている。
乃愛は、他の3人と比べるぶんには、さほど変態的ではない。みられると興奮する、太いちんぽを味わってみたい、といった嗜好はあるようだが、相手が誰でもいいわけではないだろう。アナル開発を提案されたときも、嬉々として受け入れた凉風とは違い、乃愛は興味よりも不安のほうが勝っている様子であった。
乃愛は、見た目はギャル風だがとても純真な子であり、優しく気遣いができる一方でーーとても頭が弱い。だから、凉風や凛太郎といったアクティブな変態どもの口車に乗せられて、どんなアブノーマルプレイも受け入れてしまう。
また、乃愛は凛太郎のことが大好きだから、彼に求められたら断るなんて出来ない。思春期の女の子が彼氏についつい中出しを許してしまうくらいの情緒で、どんどん過激化するスワッピングプレイにのめり込んでいくのだ。
乃愛は、本作の良心であり癒やしどころだ。しかし残念なことに、乃愛一人に焦点をしぼったエロシーンはほとんど無い。特にスワッピングプレイではないシーンとなると、序盤の教室における凛太郎との情事くらいしかない。
作品の評価
評価:優 スワッピングに特化したエロシーンの出来は非常に素晴らしい。多くのスワッピングシーンで複数の基本CGや演出用CGを用いており、1つ1つのエロシーンの尺が長く、とても濃厚なエロさが感じられる。また、エロシーンの一部はアニメーションになっており、性交時の乳揺れとピストン動作を滑らかに描いている。
一翔と凉風の視点によるストーリー展開は、嫉妬と興奮が止まらない。E-moteによる立ち絵のモーション演出は、とても自然な形でヒロインの表情がよく動く。乳揺れも大げさになりすぎない程度の動きが良い。スワッピング後、立ち絵の凉風がその表情を厭らしい色に染めながら、一翔に挑発的な言動をする場面は、それ自体がエロシーンと等価に思えるほどエロティックだ。
本作の評価については、もしこれが正しく完成された状態であったなら、今年度のベスト抜きゲー候補として最高評価(秀)をつけただろう。しかし残念なことに、私の目からみて、本作は未だ完成されていないように思える。
というのも、ほとんどのルートが不完全燃焼な形で終わっているからである。そこからもう1、2シーンほどエロシーンや掛け合いがあって〆となるかという場面で、唐突にタイトル画面へと戻るエンディングばかりなのだ。
また、凉風視点のイベントは明らかに不完全である。中途のイベントがダイジェスト気味になっているのは、まあ良いとしても、一翔視点のエンディング「088」に相当するイベントがごっそり抜け落ちているのは、さすがに看過できない。ここは、本作の趣向から考えて、最も重要なイベントの一つになるはずであり、それを省略するのはあり得ない。
本作の発表時期を考慮するなら、見切り発車もやむを得ない事情があるかもしれない。だが、エンディングに至るまでの過程がとても良く出来ていただけに、本当に残念だという思いは強く残る。有料DLCでもいいので、ちゃんとその後を補完してほしいかぎりだ。