学生時代から付き合っている地味なフリーターカップルが、SMプレイにのめり込んでいく話。ただし、彼氏は草食系であり、新しいプレイの提案は地味な彼女の方から、というのが本作の大きな特徴の一つだ。
隠れSM嗜好者にとって、パートナーをSMに誘うのはとても勇気がいることだ。そんなことをすれば愛想を尽かされるかもしれないと恐怖し、パートナーが自分にとって大切であればあるほど、カミングアウトできなくなる。だから、大抵の隠れSM嗜好者は、パートナーに実際には試せない性的欲求を、アダルトビデオやらエロ漫画やらエロゲーで発散させるわけである。
本作の”彼女”もまた、身動きできないほどきつく縛られて滅茶苦茶に犯されたいという願望を持ちながらも、”彼”にはその願望を打ち明けられないでいた。しかし、ある日AV鑑賞しながらオナっているときに、その現場を偶然、”彼”に見られてしまった。
“彼”に引かれてしまったのでは? と懸念する”彼女”であったが、実は”彼”のほうも”そういうの”が嫌いではない様子。そこで”彼女”は、その夜、なけなしの勇気を振り絞った。「(彼女が用意した梱包テープで)手を拘束して…… 犯してください……」と赤面しながら懇願し、見事、二人の関係をアブノーマルな方向へ発展させることに成功したのだった。
この状況は、”彼”にしてみれば全くの棚ぼたで、羨ましいかぎりである。自主的に避妊剤を服用して中出しをおねだりする”彼女”、変態と呼ばれて罵倒されるのが大好きな”彼女”、自分からイラマチオやお掃除フェラを提案してくる”彼女”の、なんて都合の良い女であることか。“彼”自身は何のリスクも負わないまま、恋人が理想の性奴隷に堕ちてくれるというのだ。
学生時代の初セックスで燃えて、卒業後に同棲してからは落ち着き、SMに目覚めて再び燃え上がる。而して二度目の炎上は、二人がSMへの興味を失わないかぎり、より激しさを増してずっと続いていくのだろう。正直、宝くじの高額当選より羨ましい。
この作品で具体的にどんなSMプレイが行われるかについては、FANZAの作品説明に全部載っているので、そちらを参考にしてほしい。ただ、本作は、一つ一つのプレイをすべて丁寧に描いているわけではない。初SMや初イラマチオのシーンなどは比較的多くのコマを使って連続的に描かれているけれども、全体としてはダイジェスト気味な構成になっている。
また、本作のストーリーは、”彼”や”彼女”の主観視点だけで進められるのではなく、ナレーションも交えている。場面ごとに”彼”や”彼女”の心の声が聴こえてくるが、それもどちらか一方に偏ってはいない。これは”彼”や”彼女”の物語というよりも、神目線での“変態カップル観察記録”とでも評したほうがしっくりくる構成だ。
デジ同人には即ヌキできるお手軽さをウリにした作品が多いが、本作はそれらとはやや趣が異なる。シーン単位での実用性よりも、エロティックなストーリー性そのものを好む方には相性が良いかもしれない。