I’m moralist『凍堂ヒロカの隷雄譚』レビュー(評価：可)

あらすじ

凍堂ヒロカは、He&Rose社所属の女ヒーロー。今は亡き先代ヒーロー マホの遺志を継ぎ、チェストウッド市の平和のため、ギャング組織やテロリスト達と戦う日々を送っている。

だが、ヒロカには重度の媚薬中毒者であるという秘密があった。ヒロカに強化媚薬を提供する汚職役員のダイスケは、いつもヒロカの自宅に入り浸り、彼女に容赦のない調教を行っていく。

作品解説

ヒロカの調教アンソロジー

『凍堂ヒロカの隷雄譚』は、汚職役員(ダイスケ)が、自己評価が極端に低い女ヒーロー(ヒロカ)の弱味につけ込んで、彼女を媚薬中毒の隷雄として調教する作品だ。ダイスケはヒロカの身も心も徹底的に弄びたいだけなので、彼女に愛情を向けることはない。

本作のエロシーンは、ダイスケによってアダルト動画サイト――プレイヤーにとっての『回想』――にアップロードされたヒロカの調教動画、という体裁を取っている。ほとんどのエロシーン(=調教動画)は、ストーリーの流れで発生するのではなく、ダイレクトに回想登録（=アップロード）される。そのため、ほとんどのエロシーンは回想でみるのが初見になるのだ。

エロシーンは、全66本が回想の同じページ上に並べられているが、実は基本CGごとに系統が分かれている(基本的に1系統につき3本ある)。同系統のエロシーンは肉体改造などの調教の過程を引き継ぐが、別系統のエロシーンには引き継がれず、系統ごとに独立している。

シナリオと彩色も系統別の担当者がいて、それぞれの個性があまり標準化されずに発揮されている。このため、本作のエロシーンは、言ってみれば『媚薬中毒ヒーロー ヒロカの調教アンソロジー』的な構成になっている。

ヒロカをクスリ漬けにして攻略しよう

本作には、ステージ0～13の全14ステージからなる市民救出ゲームパートがある。ただし、ステージ12はハッピーエンド専用のウイニング・ステージであり、ステージ13はフォロワー数調整用の周回ステージである。

ゲームのルールは単純で、制限時間内に街の何処かにいるクエストアイコン付のターゲットと接触し、出来るだけ多くの市民を助けること。ターゲットの所在は、画面左上のヒントをみて、当たりをつける。比較的難度の高いステージでは、助ける市民の順番とルートをちゃんと考えないと、途中で時間切れになりやすい。

ヒロカは、強化媚薬を首筋に注射することで、一時的に力を増し、高速で動き回れるようになる。この状態で障害物や敵と接触すると、それらを問答無用で轢き潰せる。

強化媚薬の使用は、”プレイヤーにとっては”メリットしかないので、積極的に使ったほうがいい。というより、そうしないと全てのイベントを回収することができない。強化媚薬のデメリットは、ヒロカの心身の健康が不可逆的に損なわれるだけなので、貴方の良心と相談して使っていこう。

評価

『凍堂ヒロカの隷雄譚』の長所

容赦のない調教が、本作最大の長所だ。ダイスケは、ヒロカを精神的に追い込んで、彼女の心の拠り所を奪い、僅かな自尊心さえ保てなくするようなやり方で調教する。ヒロカは、はじめのうちは反抗心を持っているが、極限まで追い詰められると、深い絶望感とともに快楽に染められてしまう。ヒロカの肉体よりも心をひどく傷つける精神的リョナ描写がとても淫猥だ。

4つあるエンディングについては、どれもエロゲーとして心惹かれる内容だった。3つは救いようのないバッドエンドだが、最後の1つはハッピーエンド。ヒロカの惨めな末路に興奮するばかりでなく、ヒロカが”彼女なりに”幸福になる結末をみるのも、それはそれで良いものだった。

私にとって本作の長所は以上だが、一方で看過できない短所も2つある。

短所1：起動時間が非常に長い

短所1つ目は、ゲームの起動にかかる時間の長さだ(Ver.1.1.2)。

例えば、『FF14 黄金のレガシー ベンチマーク』(FHD最高品質DLSS)で「とても快適」程度のPC環境では、『凍堂ヒロカの隷雄譚』を実行してからタイトル画面が表示されるまでには、毎回40秒弱かかる(※PC環境によって異なる)。”Now Loading”が画面右下に表示されてからが長いので、最初はハングアップを疑ったが、実は仕様である。

エロゲはPCに常駐させるようなソフトではないので、ここまで起動に時間がかかると、毎回起動させるのが億劫だ。

短所2：回想のユーザビリティが低い

短所2つ目は、回想の使い勝手の悪さだ。

作品解説でも述べたように、エロシーンは系統別の調教アンソロジー的な構成であるにもかかわらず、回想には系統別に並べ替えるオプションがない。回想登録順に左から右に並べられているだけであり、あるエロシーンと同系統の次のエロシーンは、同じページの20本先にある。そのエロシーンをみるためには、わざわざ画面スクロールして探す必要がある。

しかも、エロシーンをみた後は、回想登録1番目のエロシーンまでスクロールを戻される。そしてまたその次のエロシーンをみるために、スクロールする。戻される。サムネイルや表題を見分けるのも地味にしんどいので、誤爆することもある。本当に面倒くさい。

結論

評価：可 本作には価格以上のボリュームがあり、ヒロインの心をひどく傷つける鬼畜なエロシーンには実用性がある。ストーリー性は薄めだが、エンディングの内容自体は良い。

しかし、ゲームの起動時間が長く、回想の使い勝手が悪いので、そもそもプレイすること自体が億劫になりやすいのが難点だ。システムが改善されれば『良』評価だが、現状では『可』にとどまる。

エロシーンの詳細

凍堂ヒロカ (CV：御子柴泉)

今は亡き先代ヒーローのマホへの強い依存心と劣等感を併せ持ち、マホの幻覚さえ見えてしまっているヤク中ヒーロー。事情をよく知るダイスケにより媚薬漬けにされ、調教されるなかで自尊心を丁寧にすり潰されていく。

本作には複数の女性キャラが登場するが、エロシーンがあるのはヒロカのみである。

エロシーンのリスト