CFNM特化で逆転なしの男性被虐SM。プレイは鞭打ちなど苦痛系と、貞操帯による射精管理が主で、いくつか窒息系のプレイも混ざっている。フルアニメーションで描かれるデジタルノベルとして、非常に完成度の高い作品だ。
ストーリーの特色
発展途上のご主人様と従順なマゾ奴隷
SMの「S」はサービスのS、という言葉がある。SMプレイにおけるご主人様とは、傍から見れば奴隷を嬲っているように見えても、実際には奴隷を満足させるために奉仕する役割なのだ、という現実を示唆する言葉だ。
SMプレイの主従関係は絶対的ではなく、いつでも解消できる関係にすぎない。だから、陵辱調教モノの主人公のように傍若無人にふるまうご主人様は、自身が考える調教の完成を見る前に、すぐに奴隷の側から三行半を突きつけられる。
リアルSMのご主人様は、自己中心的でいい加減な人間には務まらない役割なのだ。むしろ調教前にしっかりとした段取りを練り、調教中は奴隷のコンディションに常に気を配るような、マメな性格をしている者こそ、ご主人様として相応しい。
本作のヒロイン(沙希)は、奴隷の主人公に対し、まさにそのような態度を心がけているご主人様だ。沙希と主人公は恋人どうしで、同じマンションで同棲している。
彼らは、外では普通の恋人のようにふるまうが、いったん帰宅すれば主従関係となる。主人公は全裸に奴隷の首輪という姿で土下座し、奴隷としての忠誠を日々示さなければならない。一方、沙希のほうは、ご主人様として奴隷とともに楽しめるプレイをいつも独りで考案し、そのための準備をしなければならない。
全身を洗い清めた奴隷がプレイルームにやってくると、沙希はいよいよその日のプレイを開始する。プレイ内容は、鞭打ち、ロウソク責め、ピンヒールによる踏みつけなど、日によって様々だが、共通点としてはCFNM(Clothed Female, Naked Male)がある。女主人は常に魅力的な衣装を着たままだが、奴隷男は常に全裸という惨めな姿を晒したまま、その日の調教を施していただくというわけだ。
沙希は、奴隷に対して居丈高な態度を維持したまま、抵抗できない彼を罵倒する。「マゾ」「クズ」「馬鹿」「豚」「家畜」といった蔑称で呼ぶだけでなく、「包茎」といった身体的特徴も含めて散々に罵倒する。しかし、そんな沙希の言葉の裏には、常に奴隷への気遣いが伺えるのだ。
例えば、その日は初めての踏みつけプレイを行うとしよう。奴隷は緊縛された状態で床に転がされており、何をされても抵抗できそうにない。そんな奴隷に対し、沙希はサディスティックな笑みを浮かべながら、ピンヒールブーツのつま先を彼の胸板に乗せる。そして真っ先に、「別に痛くないでしょ? つま先の方なんだから」と尋ねる。
それで主人公が痛みよりむしろ喜びを覚えていることを確認すると、「もっと屈辱的なことしてあげる」などと言って、踏みつけ行為をエスカレートさせていく。沙希自身も次第に気分が乗ってきて、情けない奴隷を見下しながら笑い声を上げる。
このように、沙希はSMプレイで加虐的な嗜好を満たしながらも、その一方でパートナーの状態に配慮し、被虐嗜好を満足させることも忘れていない。沙希にとって、奴隷は恋人でもあるのだから、お互いに楽しめなければダメなのだ。
もっとも、沙希はご主人様となって日が浅いので、ついついやり過ぎてしまうこともある。そうしたときには、プレイ後に優しい言葉を投げかけたり、抱きしめたり、ご褒美をあげたりすることで変わらぬ愛情を伝えている。
また、主人公がどうしても耐えられないときには、セーフワードを口にすれば、プレイはすぐに中断することになっている。ーー「お許しください」の一言で、すべてが終わる。それは、ご主人様に最大限楽しんでほしいと思っている主人公にとっても遺憾ではあるけれども、あくまで安全なSMプレイを続けるためには必要な処置だ。
だから、断腸の思いで、あるとき奴隷は言ったのだ。「お許しください」と。もちろん、ご主人様は真剣な表情でそれを聞き入れ、すぐにプレイを中断し、やり過ぎてしまってごめんなさいと泣きながら謝罪し、その日は一日中優しいセックスであんあん喘ぐ側に回ったーーとでも、あなたは思うだろうか?
本作が逆転なしを大々的に謳っている以上、沙希様がまさかそんな醜態を晒すはずもない。「エスカレイション!」という表題の意図は、まさにここから始まるのだ。
ごっこ遊びから、本当の主従関係へ
SMの「S」はサービスのS、という言葉がある。だが、これは所詮、特殊嗜好を持つマイノリティーが、法や倫理、世間体に配慮して語る詭弁にすぎない。
SMの「S」は、本来、サディズムのS。加虐嗜好は他人の心身を支配し、痛苦を与えることで満たされる。マゾ奴隷の我儘に付き合い、あまつさえ奴隷ごときに奉仕せんとする心持ちでは、到底、サディスティックな嗜好を極めることはできない。
奴隷への奉仕で満足するというならそれは、サディストではなく潜在的なマゾが、調教相手を自分の分身に見立てて代替的な快楽を得ているだけだ。謂わば、マゾどうしでSMのロールプレイに耽るような倒錯行為である。
本作のヒロインは、そのように性的嗜好の歪んだマゾヒストではない。混じりっけなしのサディストである。
以前の彼女は、その
本気になった沙希様は、主人公に本当の奴隷となることを誓わせる。そうして結ばれた主従関係は、セーフワードなどという軟弱な言葉で切断することはできない。ご主人様が鞭打つと仰ったなら奴隷は口答えせず鞭打たれるべきであり、ご主人様が我慢せよと言われたなら奴隷はひたすら我慢し続けるべきなのだ。
しかしながら、沙希様と主人公が本当の意味で「ご主人様と奴隷」の関係になると言っても、それだけでは抽象的すぎる。本当の主従関係となったことは、2人の生活やSMプレイに具体的にどのような影響をもたらすのだろうか?
本作では、この「本当の主従関係」の行方が2つのルートに分かれ、3つの異なる結末に行き着くことになる。どのルートを辿ろうとも、2人のSMプレイは逆転なしで、最後までエスカレートしていく。序盤のぬるい展開とは打って変わり、かなりのハード志向になるため、ソフトSM好きな方はここで回れ右だ。
エロシーンについての概観
エロシーン数と衣装の種類
エロシーン枠は33。前後篇に分かれている後半部分を除けば、20。1つ1つのシーンは尺が長めで、鞭打ちなどの責めが執拗に行われる。
エンディングをみるたびに、シーン回想における衣装やその色、髪型が開放されていく。最終的には、20種類の衣装(変更可能な色の種類は衣装による)、3種類の髪型が選択可能になる。ただし、特定のシーンでは選べる衣装が制限されており、髪型も衣装によって制限がある。
SM道具の種類
本作のSMプレイでは、様々な道具が用いられる。
序盤では低温ろうそくやバラ鞭、外が見えるタイプのアイマスクなど、初心者向けの道具が主である。しかし終盤になると、非プレイ用ろうそくや一本鞭、貞操帯、鼻も塞ぐフルフェイスマスクなど、なかなかエゲツない代物が用いられるようになる。さらに、ストーリー展開によっては、奴隷を真に奴隷たらしめるためにXXが使用されたりもする。
巧みなカメラワーク
本作は、カメラワークに相当なこだわりが感じられる。出来の悪いアダルトビデオのように、カメラがほとんど固定されたまま、ということがない。本作では同じシーン内でカメラの位置や視点が頻繁に切り替わるのだが、これはとても自然な流れで、本当に違和感が少ない。
好んで用いられているのは、下から見上げるアオリと主観視点。奴隷は主人の膝より高い位置に頭を上げてはならないのだから、沙希様の御御足から御顔を伺うことは、奴隷の本分だ。決してご主人様のパンティーを覗きたいなどと、不遜なことを考えているわけではない。
また、沙希様は実に立派な胸をお持ちであるから、ふとしたときにそこを凝視してしまうのは、致し方ないことだろう。
苦痛系調教と射精管理
沙希様と主人公が本当の主従関係になった後、調教の基本方針は苦痛系と射精管理に分岐する。
苦痛系ルートでは、腹部や股間への蹴撃、一本鞭による鞭打ち、非プレイ用蝋燭責めなど、かなり痛そうなプレイばかりになる。鞭打ちは、序盤ではペチペチと軽めに叩いていたが、調教が本格化した今となっては、まるで容赦がなくなる。体中に青痣やミミズ腫れを作りながら、何とか耐えきれば手コキなどで射精させていただけることもあるが、ガチのマゾ奴隷でなければ裸足で逃げ出すだろう。
射精管理ルートでは、貞操帯の日常的な着用を義務付けられ、性欲の発散を管理される。最初は数日我慢すれば射精させてもらえたが、禁止期間は一週間、一ヶ月とどんどん伸びていく。しかも、射精解禁日でも、沙希様の気まぐれによっては射精させてもらえず、寸止め手コキで延々と焦らされることにもなる。ちなみに、沙希とセックスできるのはこのルートだけだが、セックスといっても碌でもない内容なので、期待して良い。
これらの調教ルートの共通点は、沙希様の支配欲が日に日に暴走していくことである。奴隷への支配を徐々に強めてゆき、プレイ内容は生殺与奪を握られるようなものにエスカレートしていく。そしてその支配の果てに、ご主人様の寵愛を得るか、はたまたモノ同然に扱われるかは、プレイヤーの選択次第だ。
作品の評価
評価:優 この作品は、序盤から中盤にかけては愛情と信頼からなるSMプレイを描く。しかし、沙希と主人公が本当の主従関係を結んでからは、完全なる支配に基づく手加減抜きのSMプレイに移行する。序破急のテンポで、どんどんとエスカレートしていくストーリー展開の過激さは、まさに「エスカレイション!」の表題に相応しいものだ。
3Dキャラクターの動きはとても自然で、沙希の表情もよく動く。この手の動画作品では、射精や放尿、唾液などの液体表現が鬼門だが、そこもなかなか上手く表現されていたと思う。また、カメラワークも巧みであり、エロシーンの臨場感はたっぷりだ。
本作には沙希の衣装が豊富に用意されているので、クリア後はシーン回想でいろいろと着せ替えて楽しむことができる。本作は、新参サークルがDLsite専売(※同年8月18日からFANZAでも販売開始)で出す処女作にしては、やや強気な価格設定だが、支払った金額以上の価値は確実にあるだろう。
購入前に注意したいのは、この作品は要求スペックが高めなので、低スペックなPCではまともに動かないということ。タブレットやノートPCでプレイしようと思っている方は、事前に体験版で動作確認することが必須だ。