高校3年生の春、童貞一人と処女二人が3Pする話。序盤は卒業間近で不安定な男子高校生の心の機微を丁寧に描いているが、エロシーンに突入した途端、シュールな展開に転げ落ちる。しかし、その落差の激しさが、かえって面白く感じられるユニークな作品だ。
主人公の広木は、高校入学以来ずっと長峰香純のことが気になる一方で、明るく話しやすい宮田綾にも好意を抱いていた。広木は友人の加藤から恋人がヤラせてくれないという相談を受けるが、実はその恋人というのが香純であると発覚し、失恋してしまう。しかし、広木が綾の自室で香純と偶然再会した際、香純が加藤とのセックスを拒んだことが原因でフラれたことを知らされたのだった。
本作は、まず本番のシチュエーションが本命の香純でなく次点で気になる綾の部屋というのが、外側からストライクゾーンを攻めてくる変化球めいて良い。また、初めて入れてもらった女の子の部屋に浮足立ち、ちょっとしたことでドキドキしてしまう心境も上手く表現されている。
そうした心理状態の広木が、気になる女の子がフラれてフリーになったといきなり知らされ、さらには下半身絡みのトークまでして感情がオーバーフローし、ついつい馬鹿な言動をしてしまう気持ちも分からなくはない。だが、
綾「なんかさ… 怖いじゃん / だって(ペニスは)硬いんでしょ? 「骨」みたいな感じ?」
広木「じゃあ 俺の見せようか? な~んて…」
綾&香純「うん」「うん」
この流れは分からない。チンポを開帳するだけにとどまらず、綾や香純のほうから積極的に手コキしてくるのも分からない。床を汚されたくないからって、お口でザーメンを受け止める綾の気持ちも分からない。これから大人になる少年少女たちの青春が、まるで中年向け漫画雑誌の読み切りのようなタッチで素朴に描かれていると思ったら、次の瞬間にはエロ漫画的超現実の世界へと放り込まれたのだ。
そこからは、まだ処女の香純にシックスナイン型イラマチオをキメたり、綾のベッドで先に香純の処女を散らしたり、それを観戦していて興奮した綾も巻き込んでついには3Pに発展したりと、本当にやりたい放題だった。
本作のアンニュイな序盤から、まさかこのようにシュールなエロシーンへと導かれるとは思いもしなかった。あまりの急展開に「はぁ?」と戸惑いの声が上がったが、しかしそれは必ずしも不快ではなかった。エロシーンそのものは、まだ成熟しきっていない少女の体臭まで伝わってくるような良い塩梅であり、充分に興奮できる内容だったからだ。
そうして処女2人との3Pという非日常が終わりを迎えると、唐突に、「春くらべ」というタイトルの意味がすとんと胸のうちに落ちてきた。エロシーンではあれだけはっちゃけていたのに、ストーリーは最終的にはタイトルの示唆するところへと綺麗に着地していた。
私はこの作品がたまたまセールだったから買ったのだが、奇妙な掘り出し物を手に入れた気分だ。寝取り寝取られという意味ではかなりマイルドな作風であるものの、個人的には嫌いじゃない。この作品が気に入るか否かは、エロシーンへの導入の唐突さをどの程度受容できるかが肝となるだろう。